黎明の霧

主に企画や妄想でできた設定などの書きだめです。

消失したカケラ

お友達と遊ぶの?

お気をつけて

ーはいお母様、お祖母様

出かけるのか

いってらっしゃい

ーいってきますお父様、お祖父様

誰と遊ぶんだ?

ー最近公園でしりあったこです、お兄様

あんまり遅くに帰っちゃダメよ?

ーはい、お姉様
   夕方にはもどります



カラスと一緒に帰りましょ

カラスが鳴くから帰りましょ

またね、またね

また遊ぼ

ひとりで歩く帰り道

少しなんだか人肌恋しい

早く帰ろう、おうちへ帰ろう

そしておかえりと言ってもらおう

美味しいごはんが、待っている

優しいかぞくが、待っている



「ただいま帰りました」

閑散とした家の中

「…お母様?お父様?」

出かけるなどとは聞いていない

「…お祖母様?お祖父様?」

返事はない

「お兄様、お姉様?」

座敷の方へと足を向ける

なんだか嫌な予感がするのだ

ああ、この家はこんなに大きかったのか

ひとりだと余計、そう思わされる

「せきです、ただいま帰りました」

何かにおう、ごはんではないにおいだ

襖をあける

「あぁ、この家の坊やね。おかえり」

知らない女の人

「ごめんね、もう1人家族がいるとは思ってなかったの」

女の人の手には赤色
足元も
赤くて緋くて紅くて朱くて

「嗚呼、怖がらなくていいの
すぐに家族の所へ連れて行ってあげる

怨むなら、この家に生まれたことを怨むと良いわ」

これは、なんだ

あの赤いのはなんだ

このにおいはなんだ

思わず後ずさる
女の人はこっちに来る

嫌だ来ないで来るな来るな来るな

恐い

あの赤いのに**されてしまうかもしれない

頭は働かないが、何故か足が動く
まるで何かに呼ばれているかのように

「やだ、逃げないで頂戴」

そんな声も振り切って呼ばれるがままに

辿り着いたのは小さな部屋

これでは逃げられないじゃあないか

そう思いながらも足は止まらない

そして自分の足はとある武器の前に止まった

『汐これはな、父さんの実家で代々受け継がれていた宝物なんだ
名前は----』

双子の手戟

たしかそう言われていた筈だ



それに手をかけると

「追いかけっこはおしまいかしら?」

後ろからそんな声が聞こえた











そこからの記憶はない