翅を千切った雀蜂連れて
ぴんぽーん
ぴんぽーん
「おじゃまします」
「おー琉也と亮哉か、今そっち行けねえから勝手に上がっていいぞ
アイスも勝手に食っていい」
「「はーい」」
いまから
あのひとのところにつれてってあげる
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*
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「母さん、」
「なぁに琉也」
「亮哉と遊びに行ってくる」
「……どこに?」
空気が悪くなった、
母さんは一拍おいてそう尋ねたのだが
笑顔が下手くそだ
「駅の近くの公園」
「あらそうなの!暗くなる前に帰ってらっしゃいね?」
これは本当の笑顔
母さんは俺たちがあの人、叔父に会いに行くのが嫌らしい
「亮哉、行くぞ」
「あ、琉待ってよー」
別に嘘は言ってない
公園に行ってから叔父所に行く予定ではあるだけ
嘘ではない
*
公園に着いた
今日は全然人がいないから貸し切りだね、と琉に笑いかけた
けど、琉は何かを見つめていた
「琉?どしたの??」
「……ブランコのとこ」
「え?」
キィ……キィ…
1人でブランコを漕いでる子が1人
その目は見たこともないくらい綺麗な赤色
「あんなこ、この辺でいたっけ??」
「俺は見たことない」
「んーどうしよっかな、話しかけてみるよ」
「ちょっ、待て!」
琉の制止なんて聞かないで行く
「ねぇ君!」
「えっと、なんですか?」
「1人で遊んでたら楽しくないでしょ?僕らと遊ぼ!」
「いいんですか?」
目を瞬かせる赤目の子は同じ年代とは思えない口調
「うん!僕は神立 亮哉であっちにいるのが双子のにーちゃんの神立 琉也、君は?」
「りょうやくんと、りゅうやくん…
ぼくは、よいの せきです」
*
赤目の奴…汐は俺たちの一つ歳下かつ、この公園の近くの御屋敷のこどもらしい
普通に喋って、遊んで時計を見ると4時より少し前
あぁ、そろそろ叔父のところに行くか
「亮哉、行くぞ」
「えぇ〜……」
「元々行く約束だっただろ」
「もう、行っちゃうんですか……?」
「……そんな顔をするな、また来る」
そう言って撫でると汐は擽ったそうな顔をする
「あー汐ずるい!僕も!」
「餓鬼か」
「あ、あの!来週の土曜日っていけますか……??」
「んー、多分大丈夫だよ。ねっ琉!」
「そうだな」
*
少しボロいアパートの2階
叔父さん家はその右側
インターホンを押そうとするけど、琉がそれを遮る
「どしたのりゅ「誰かいる」…え?」
ボソッと告げられ、耳をすます
『なんでも言うこと聞きますから…』
(…少し低めの女の人の声?)
『わたしを理解してくれるのはもうあなたしか…………!』
『あーわかったわかった
お前を愛してやって構わねえよ』
『ほ、ほんとう……?』
『俺が嘘ついたことあったかぁ?なぁチヒロ』
『あ、あなたは私に嘘なんてつかない』
『そうだ
嗚呼、お前さ、俺に愛されてぇなら………………チヒロ、駅近くの屋敷わかるか?』
『?…ええ、まぁ』
『あーお前の心準備とか考えると……そうだな二週間後の…日曜にでもその家の奴全員殺せ
そしたら愛してやってもいい』
『……ッ!?』
『安心しろ、それで警察に行こうが出てくるまで待つし、地獄に堕ちようがついてって、愛してやるよ』
そう言って笑い出したおじさんの……いや、おじとすら思いたくない男の声に吐き気がして、思わず僕は琉の手をつかんで走り出した
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い……!!!
*
*
「あっりょうやくんりゅうやくん!来てくれたんですね!」
「うんもちろんだよ!ねっ琉!」
「約束だったしな」
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「ねぇ汐、来週の日曜って空いてる?」
「んーと……はい!」
「そっかー!」
*
ゆーやけこやけで
ひがくれて
やーまのおてらの
かねがなる
おーててつないで
みなかえろ
からすといっしょに
「結構遅くまで遊んだし……大丈夫だよ、ね」
「これが俺たちにできる最大のことだったろ?」
「…………うん」
かえりましょ
「ほら、帰るぞ」
*
*
*
『続いてのニュースです
今日夕方、○○市にて一家殺人事件が起こりました
犯人とみられる者は何故か既に亡くなっており
警察は保護したヨイノ セキくんへのカウンセリングと共に
事件の詳細をーーーー
*
「あの女の人?死んだらしいな」
「うん、そうらしいね
おじさ……ううん、あの男死んじゃったかな??」
「地獄に堕ちたらついてくって言ってたもんな」
ケーサツの人に話して、少しだけ汐と会った
「あー……でもさ、お葬式とかしてないよね??」
汐は壊れてた
「あの男、嘘つきなんだな」
あの男が壊した
「そうだね
あ、もしかしたら失敗したのかも?」
「失敗?」
「うん
あーそうだ、もう夏だね」
「亮哉、ちゃんと話せ、訳がわからん」
「ごめんごめんw
いやね、もう夏でしょ?
スズメバチもいるよねーってね?」